スポーツは子供の「立ち直る力」を育てるのか!?(1)

「最近の若者は打たれ弱い,すぐに諦める,困難に立ち向かえない」というのは,手厳しいスポーツ指導を受けた世代の大人が持つ感想でしょうか.
それどころか現代は,困難に立ち向かうことすら不要というような価値観に触れたりするなど,時代の変化を大きく感じることもあります.
昭和から平成,令和と移り行く中で生活が豊かになり,「ゆとり」が強調された数年を経験したこともあって,子供が必要以上に我慢をする機会は減ったのかもしれません.
もっとも,あることを不満に思えば,他の選択肢が多く用意されている時代です.
困難を避けてそれなりに生活できるのであれば,それに立ち向かう機会も自ずと減ることでしょう.
この記事では,「スポーツ活動を行うことで子供の『立ち直る力』を育成することができるのか」ということを考えてみたいと思います.

人はできれば困難な状況は避けたいと願うものです.
それは自然な姿であるともいえます.
しかし,たとえそうだとしても,現実には,私たちはいくらかの困難に立ち向かわなければなりません.
身近なところで例を探せば,筆者の勤務先大学では4年生が就職活動のまっただ中です.
彼らにとって就職活動は,社会人になる前に乗り越えなければならない大きな壁として映っているのかもしれません.
将来に対する不安を覚えながらも自分自身を真剣に見つめ,未体験の活動を手探りで進めていく就職活動は,多くの労力を要するものです.
そして,その結果として第1志望の就職先に進路が決まればよいのですが,就職試験で不合格となってしまう学生も少なからずいます.
そのような体験をする中で,学生は挫折感を味わうこともあるかもしれません.
一時的に落ち込むことは誰にでもあります.
しかし,その気持ちをいつまでも引きずるわけにはいきません.
たとえ困難な状況に直面したとしてもすぐに立ち直り,次の試験に向けて準備をしていくことが就職活動では重要です.

このような「立ち直る力」の重要性はなにも就職活動に限ったことではありません.
子供においても,彼らを取り巻く環境は極めて不安定な状況を含んでいます.
子供を巻き添えにした事件や事故は相変わらず発生しています.
そして,時代はまさに新型コロナウィルスの渦中です.環境が大きく変化する中で生活を強いられているのが今です.
子供がストレスイベントに遭遇する機会は少ないとはいえません.
また,重大な出来事ではないにしても,ストレス社会といわれる現代において,子供が学校生活で学業上や人間関係に関わる困難に直面することは多くあります.
しかし,たとえそのような状況に遭遇したとしても,くじけることなく,たくましく生きていく力を備えていることが,今の子供には求められるといえます.

ところで,「立ち直る」という言葉を辞書で調べてみると,「倒れそうになったものがもとに戻る」や「悪い状態からもとの状態に戻る」という意味があるようです.
すなわち,「立ち直る力」とは困難な状況を体験したとしても,そこから回復することができる力であると考えられます.
このような「困難な状況からの回復」を表すものとして「レジリエンス」という言葉があります.
「レジリエンス」は精神的な回復に関わる個人の能力のことを意味します.
そうすると,先程,私たちが掲げた「スポーツ活動を行うことで子供の『立ち直る力』を育成することができるのか」という問いにおいて,「レジリエンス」を理解することは重要な示唆を与えてくれそうです.
はたして,青少年のスポーツ活動は子供の「レジリエンス」を高めることができるのでしょうか?
次の記事では,スポーツ活動が子供の「レジリエンス」の向上につながるどのような機会を提供することができるのか,
そして,そのためにコーチが工夫できることは何なのかということについて考えてみたいと思います.

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