スポーツは子供の「立ち直る力」を育てるのか!?(2)

ストレス社会といわれる現代において,子供が学業上や人間関係に関わる困難に直面することは多くあります.
しかし,たとえそのような状況に遭遇したとしても,くじけることなく,たくましく生きていく力を備えていることが,今の子供には求められるといえます.

前記事では,「困難な状況からの回復」を表す概念として「レジリエンス」という言葉を紹介しました.
「レジリエンス」は精神的な回復に関わる個人の能力のことを意味します.
はたして,青少年のスポーツ活動は子供の「レジリエンス」を高めることができるのでしょうか?
今記事では,スポーツ活動が子供の「レジリエンス」の向上につながるどのような機会を提供することができるのかということについて考えてみたいと思います.

子供がスポーツ活動を行う場として,学校における運動部活動や地域のスポーツクラブなどがあります.
多くの子供は自身の興味や関心に応じて,積極的な態度でそれらの活動に参加しますが,そこで子供は楽しさばかりを味わうわけではありません.
ときには,辛く苦しい経験をすることもあります.

例えば,勝利や記録の向上を目指すクラブでは自己の目標達成に向けて日々の練習に取り組みますが,そうした練習は厳しいものです.
そして,どんなに練習をしても上達が感じられず,伸び悩むこともあるでしょう.
自分のせいで試合に負けてしまったときには,大きな挫折感を味わうかもしれません.

このようなときに私たちは意欲や気力を失い,自分の能力に失望することすらあります.
また,チームメイトと上手くいかずに関係がぎくしゃくすることや,コーチから厳しい要求を突きつけられたりするなど,人間関係に関する悩みもあります.
さらには,大切な時期に怪我をして,試合や練習に参加できずもどかしい時間を過ごすこともあるでしょう.
このような経験は,スポーツ活動に参加する子供ならば,程度の差こそあれ多くが経験するものです.

嫌な出来事や困難を経験することは,できれば避けたいと誰もが思うでしょう.
しかし,ネガティブな出来事と考えられるこれらの事柄は,子供にとって果たして単純に害であり,無駄なものと言い切れるでしょうか.
視点を変えてみれば,子供はスポーツ活動を通して,自分なりに失敗することやそれに伴うマイナス感情を経験する「貴重な機会」を得ていると考えることもできそうです.
子供は困難を経験し,それを克服していこうとする中で,問題解決能力やストレス対処能力を高めることができます.
また,子供が根気強くチャレンジを続け,自らが成し遂げたという成功の実感を得られたときには,有能感を高めることもできるでしょう.

幸いなことに,スポーツ活動は子供が困難に立ち向かううえで効果的に機能し得る様々な資源を有しています.
例えば,同じ関心を持ち目標を共有するチームメイトの存在や,自分の成功を心から願い思いやりを持って接してくれるコーチの存在は,子供が困難に立ち向かう際に重要なサポート源となります.
それらのサポートを求め,活用し,また自らも他者の活動をサポートすることによって,助け合える存在として双方の関係は強化されます.
そのように考えれば,「スポーツ活動は子供のレジリエンスを向上させる場を提供している」といえそうです.

「スポーツをしてきた子供は我慢強い,少々のことでもへこたれない」

このような言葉を聞くことがありますが,これはスポーツ活動によって高められた子供のレジリエンスへの評価といえるかもしれません.
次の記事では,子供がスポーツで「立ち直る力」を高めるために,コーチや保護者が工夫できることについて考えてみたいと思います.

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