青少年スポーツでは勝利を目指してはいけないのか!?

前記事では,「重要なことは選手の『人間形成』であって,目の前にある試合の勝敗がそれよりも先に来ることはない」ということに触れてきました.
それでは,青少年スポーツでは勝利を目指してはいけないのでしょうか?
また,このような問いに対して,コーチである皆さんはどのようなお考えをお持ちですか?

私自身はたとえ青少年のスポーツであったとしても,勝利を目指すというのはとても大切なことであると考えています.
しかし,ここで重要なのは勝利の位置づけです.
これを間違ってしまうと,私たちのスポーツ指導は間違った方向に進んでいく可能性もあります.

「青少年」は個人あるいは集団でスポーツ活動を行います.
そして,彼らが一生懸命スポーツに取り組める背景には,彼らなりの魅力的な「目標」の存在があります.
それは人によって様々でしょうが,例えば,全国大会に出場したい,甲子園で投げたい,金メダルを取りたい等,勝利や記録の向上に向けられた目標があってもよいでしょう.
このような本人にとって魅力的な目標があるからこそ,青少年はそれに惹きつけられ,毎日毎日,精力的にスポーツに取り組めるようになるわけです.
これは青少年がスポーツ活動にコミットしている状態と呼ぶことができます.

スポーツ活動にコミットする中で,青少年は様々な経験をすることができます.
例えば,「上達」の過程を味わう,「工夫」して練習に取り組む,仲間と「協力」する,精一杯「努力」する等があるでしょう.
また,それらの経験と共に,青少年は情緒性(「喜・怒・哀・楽」の感情)も発達させています.
例えば,試合に勝って嬉しかった,仲間と一緒に練習して楽しかった,時には試合に負けて悔しい思いをした,あるいはコーチに叱られて惨めな思いをすることもあるかもしれません.
このように,青少年は日々のスポーツ活動を通して様々な経験をするとともに,豊かな情緒性を育むこともできるのです.

重要なことは,このような経験を「スポーツクラブ」,あるいは「運動部活動」といった制度的な枠組みの中で,スポーツの先輩である「コーチ」からの支援を受けながら行うことができるということです.
これはまさに,スポーツ活動は青少年の人間形成において,非常に有意義な場であると考えてよいでしょう.

このようなことから,青少年がスポーツ活動にコミットできる条件の一つとして,「勝利を目指す」ということはとても大切なことであると私は思っています.
しかし,ここで改めて思い出したいことがあります.
それは,私たちコーチの役割は何であったのかということです.

前記事で指摘してきたとおり,コーチの役割は「青少年の人間形成への寄与」でした.
私たちは,絶対にここから軸足を外すことはできません.
つまり,勝利を目指すということは大切なことであるとは言いましたが,勝利はスポーツ指導の「目的」にはなり得ません.
それでは勝利をどのように位置づけるのかというと,勝利はあくまでも青少年に人間形成の場を提供する「手段」,あるいは「きっかけ」として位置づける必要があるということです.
このことは,前記事で私たちが学んだ「アスリートファースト・ウイニングセカンド」と共通する考え方であると言えます.

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